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本図は『源氏物語』の「若菜の巻」に取材し、女三の宮を当世風の立美人として描いた見立絵。女三の宮が御簾(みす)越しに蹴鞠(けまり)を見ていると、逃げようとした唐猫の綱で御簾がめくられる。その一瞬に、女三の宮の姿を見た柏木の衛門(えもん)が、彼女に一目惚れするという場面。浮世絵ではしばしば描かれた人気のある画題である。
川又常正は、18世紀前半に活躍した、肉筆画を専門に描く川又派の絵師。見立ての手法を好む点、目が離れた、なで肩の華奢な美人を描く点など、主題、様式とも春信に先行する存在として重要である。 |