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水田コレクションより

歌川豊広(?〜1829)「南楼名妓」
 うたがわ とよひろ 「なんろうめいぎ」
 寛政〜享和(1789〜1804) 大判錦絵


 
白雲母摺(きらずり)の背景に、机上の扇面を眺める芸妓が描かれた豪華な大首絵。間着の菊模様が黒い薄物に透けて見える表現は俊逸である。南楼とは、吉原の北に対する南の品川遊郭を指す。芸妓の名は、机上の封じ文に記される「から琴」。扇面には「儘川面/よるべなき/山家育(やまがそだち)の/わしらまで/つかみ附たる/君の俤(おもかげ)」とある。
歌川豊広は、豊春門下で豊国の兄弟弟子。版本挿絵を主とし錦絵は少ないが、美人画で評価を得る。鶴首、細面の瓜実顔に細目、富士額のほっそりとした美人がその特徴。
本作は、つり上がった目など像主の個性を描き分けており、大首絵という形式とともに、豊広には珍しい貴重な作例である 。