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水田コレクションより

土佐光起(1617〜91) 「源氏物語 蛍の巻」
 とさ みつおき 「げんじものがたり ほたるのまき」
 江戸時代前期(17世紀) 紙本着色  


 
源氏物語の各帖の詞書(書)と画が一体となった扇面画帖(せんめんがじょう)の一葉。書は金泥や金砂子が散りばめられた豪華な料紙に、第25段「蛍」の前半、兵部卿の宮が玉鬘(たまかずら)に求婚する場面の一文が記される。

蛍/宰相のきみとて/手なともよろしう/かきおほかたも/おとなひたる人/なれはさるへき/折々の御返りなと/かかせ給ふ

本図が詞書の絵画化であるなら、中央の男性が光源氏で、左の女性が玉鬘、右の硯箱を前にした女性が宰相の君であろう。針のような均質な細い線で細密に描写され、伝統的な「やまと絵」の画法が認められる。良質な絵の具を用い、金を多用した優美な作品といえよう。
江戸時代、この種の土佐派による源氏絵は、嫁入道具などとして需要があり流行した。