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水田コレクションより

鈴木春信(1724?〜1770)「六玉川 調布の玉川」
 すずきはるのぶ  「むたまがわ ちょうふのたまがわ」
 明和4年(1767)頃 中判錦絵揃物  


   
歌枕として名高い6つの玉川を主題として、それぞれの玉川にちなむ著名な和歌を掲げ、その歌意を江戸時代風俗に置きかえて表した6枚揃のうちの1図。
図上部の色紙形に、玉川の名とその所在する国名、和歌と歌人の名を記す。季節や時の移ろいを写しとった背景描写、引き締まった構図のほか、凹凸で対象を描きだす「きめ出し」で晒す布の質感を表現するなど、春信の造形、色彩における繊細な感覚がみられる。
春信は古典を当世美人に翻案する見立絵を多く手がけたが、その中でも本作品は格調高い優雅さを誇る代表作である。この6図がすべて揃うのはメトロポリタン美術館と水田美術館のみで、さらに当館所蔵本は保存状態が極めてよく、摺られた時の色が鮮やか残っている稀少な名品である。
鈴木春信は、錦絵創始者の一人であり美人画の大家。王朝風の典雅な雰囲気、中性的で清純な男女像が人気をはくし、以後の美人画に多大な影響を与えた。