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公益財団法人 一般用医薬品セルフメディケーション振興財団 啓発事業等の助成に採択



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演者と参加者、本学教員の記念写真
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Taylor教授に質問する本学学生
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Ross Tsuyuki教授
写真4
Jeff Taylor教授
写真5
参加者によるSGD
 
 本学薬学部、山村重雄教授(臨床統計学研究室)の申請した啓発事業が、公益財団法人 一般用医薬品セルフメディケーション振興財団により採択されました。テーマは「ワークショップ:OTC医薬品1)を用いた実務研究の実施方法」で、OTC医薬品を用いた患者ケアを「実務研究」として確立することを目的に、薬剤師を啓発する取り組みです。
  本助成研究の一環として、アルバータ大学(カナダ)のRoss Tsuyuki教授とサスカチュワン大学(カナダ)のJeff Taylor教授を招聘し、12月1日〜2日に本学紀尾井町キャンパスにて、ワークショップを開催しました。お二人からは「カナダにおける薬剤師のOTC医薬品を用いた患者ケア」についてご紹介いただき、参加者は「日常業務を実務研究に結び付ける考え方」について、ワークショップ形式で討論・発表することで、エキサイティングな二日間となりました。
  ワークショップでは、カナダにおける薬剤師の役割やOTCの使い方の現状を学んだ後に、OTC医薬品を用いた患者ケアの実際について学びました。カナダでは州によって違いがあるものの、薬剤師は医師から独立して医薬品の処方ができることや、薬の変更、注射薬の投与、臨床検査の依頼などができることを知り、日本の薬剤師との職能の違いに驚かされました。OTC医薬品については日本で使用できるものと少し違いがありましたが、一つ一つの医薬品に対して確かなエビデンス2)をもとにした解説は、これからのOTC医薬品の販売にも確かなエビデンスが必要であることを示していました。
  また、薬学生や薬剤師へのOTCに関する知識やスキルの教授方法について、カナダでの事例を紹介いただきました。日本ではまだOTC教育は十分なされていない状況を鑑み、今後の薬学教育のあり方を考えさせられました。
 二日目は、薬学実務研究の考え方とその実績についての講義が行われました。いずれも薬剤師の介入が患者ケアに有効であることを学問的に示した実例が示されました。古い伝統的な薬学師の仕事からはエビデンスは出てこない、薬剤師のエビデンスは薬剤師による実務研究の中から生まれてくるとのTsuyuki教授の言葉は説得力がありました。かなり余裕をもったスケジュールにしていたはずですが、予定していた時間を超えるほどの質疑応答があり、この分野の参加者の意識は非常に高いことを示しています。
 今のカナダのシステムができあがるまでには医師との軋轢も多くあったようです。しかし、「薬剤師の仕事は医師のためのものではなく、患者のためのものである。その自信を持てば患者から信頼を得ることができる」、「薬剤師の職能を変えることができるのは薬剤師だけです。薬剤師が自ら変えることができないことを誰が変えることができますか?」とこれまでの実績を元にしたTsuyuki教授とTaylor教授の話には心を打たれました。
  盛りだくさんの内容でしたが、最後に、Tsuyuki教授から「For Patient Care〜患者ケアのために、実務研究を毎日行いましょう」という処方せんを示していただき、会を終了しました。
 

<注釈>

1)OTC薬一般用医薬品のことで、医師による処方箋なしに購入できる薬。薬事法第25条により、"医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用することが目的とされているもの”と定義されている。薬局のカウンター越しに購入することもあることから、 over the counter drug(OTC薬)とよばれる。
2)エビデンス研究等に基づく科学的な根拠のこと。研究方法によって信頼度が異なるため、各団体でランク付けなどが試みられている。

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