薔薇Discoveries

バラに関するミニ知識を順次ご紹介します。


◆バラはどこから来るの?

今回は、バラの産地に関するミニ知識です。 8月末、NHKのテレビ番組で「ケニアのバラ」が紹介されました。色が鮮やか、大きくて花弁は肉厚、茎も太く、長持ちするのが特徴であると、「AFRIKA ROSE」(渋谷区広尾)という店の女性オーナー(萩生田愛さん)が、ケニア産のバラにかける想いを熱く語っていました(バラ生産の主役は女性たちで、彼女たちがいかにも幸せそうに働いている姿が映し出され、ケニアの経済成長にも貢献しているという事情も紹介されました)。
「ケニアでバラが生産できるの?」と思われる方があるかもしれません。バラの産地で有名なのはオランダやインドですから、赤道直下のアフリカでバラが育つのかという疑問です。
そこで今回は、「空飛ぶバラ」といわれるようになった、世界のバラの産地についてご紹介します。ちなみに「空飛ぶバラ」とは、日本に輸入されるバラが世界各地から航空機に乗ってやってくる、という状況を表現したものです。

日本国内のバラの流通

日本はバラの自生地として世界的にも有名です。最新のデータ(2014年)では、国内では2億7650万本のバラが出荷され、産地では愛知県(4,920万本)を筆頭に、静岡県(2,380万本)、福岡県(1,920万本)と続きます。国内で流通しているバラ(切花)は、現在は国産が主流で、海外から輸入されているバラは全体の約20%程度ですが、次第にその割合は増加しています。とくに、国内のバラの出荷量が減少する秋から冬にかけては、海外からの輸入量が増加します。2014年の統計では、バラの輸入は2,939トン、23億円という数字を示していました。
バラは生鮮4品(野菜、果物、鮮魚、花卉)のひとつで、新鮮でなければなりません。そのため、輸送には航空機が使われることが多く、中でも成田空港に到着する「空飛ぶバラ」は、輸入量と金額で約半分になっています。

バラの生産国

昔はオランダからのバラの輸入が多かったのですが、実はオランダは花の生産に適している土地ではありません。とくに10月から2月までは日照時間が短いので、この時期は人工的に育成してきました。そうした条件のために、オランダやヨーロッパ資本のバラの生産会社は、アフリカの農園でバラを作っていたのです。オランダ産だと思っていたバラが、実はアフリカ産だったということです。
バラ栽培には、最低気温10度、最高気温25度前後と温度差が大きいことと、日射量の多さの2つの条件が必要です。そのため、赤道直下で標高2000m以上の高地が、年間を通してバラ栽培には適しているといわれています。近年、日本の輸入先がオランダからアフリカに移ったのはこうした理由によります。

国別シェアでケニアが健闘


左からマリクレール、アンダルシア、ナイチンゲール
(出典:AFRIKA ROSEのホームページより)

このように、日本のバラの輸入量の国別のシェアはこの10年間で大きく変化しています。
ケニアは2004年には、数量シェアでわずか1.2%でしたが、10年後の2014年には25.7%と、大きくシェアを伸ばしました。輸入先では、韓国についで第2位を占めるまでになりました。
逆にシェアを大きく減らしたのは韓国とインドです。韓国は2004年にから10年間で数量シェア約35%減、インドに至っては2004年に数量シェアで21.0%であったのが、2014年には10.9%と半分に落ち込みました。 その他、2004年に5.5%を占めていたオランダは、2014年にはシェアを減らし、「その他(3.5%)」の中に組み込まれてしまいました。実際、2007年のデータでも、すでに3%に減っています。
ケニアは、かつては欧米を中心にバラを供給してきましたが、それが日本に輸出するようになったのは、ケニアから中東のドバイを経由する航空輸送手段が充実した(2002年関西空港への直行便がスタート、その後、成田、羽田、中部、新潟などの直行便)ことが背景にあります。短時間で日本への輸送が可能になったことが、ケニアからのバラ輸入を増やした大きな要因といわれています。
ケニアのバラは色の鮮やかさと大きさ、丈夫さで人気がありますが、中でも、赤と黄色のグラデーションのマリクレールは日本ではあまりみかけないバラです。そのほか、ユニークなバラがいくつも生産されています。冬場は、切花にもかかわらず1カ月ほど元気でいるそうです。

 


   
                                                             出所:東京税関(2015年2月)
    

 

 


◆分類について


ARSのホームページより

バラは、正式に名称登録されているものは約4万種類といわれています。その分類方法は多様で統一されていないのが現状です。本ホームページでは、誰にでもわかるように色別の分類にしました(薔薇図鑑を参照)。

世界的な分類としては、
1.世界ばら会連合(WFRS:World Federation of Rose Societies)
2.アメリカバラ会(ARS:American Rose Society)
3.英国育成者協会(BARB:British Association Representing Breeders)の3つの団体の定義が使われていますが、日本では2つ目の「ARS」の定義に準じています。

公益財団法人日本バラ会の分類は、「ワイルドローズ」「オールドローズ」「モダンローズ」の3つです。それぞれ、概要とバラの系統を以下に示しました。

ワイルドローズ


庚申薔薇(ロサ・キネンシス) (出典:WEBバラ図鑑)

野生種のバラのことで、「原種」といわれる種類です。野生のバラは、北半球の温帯に約200種類が自生しています。花弁は5枚、樹形は半つるが多く、花期は春の一季咲き。葉柄の付け根に托葉があるのが特徴です。現代のバラの祖先種といわれるのは、ノイバラ、ハマナス、庚申薔薇(こうしんばら)など 7、8種の野生のバラです。その中に日本原産が2種類(ノイバラとテリハノイバラ)、そして四季咲きの基となった中国原産の庚申薔薇を加えると、バラのルーツは東アジアにあるのかもしれません。

分類
非つる性系・・・エアシャー系(Ayashire)
つる性系・・・・・クライミング ボールソルト系(Cl.Boursolt)

オールドローズ


ダマスクローズ(ダマスク系) (撮影:本学ローズガーデン)

古くからある歴史的な品種群を指し、改良のもとになった品種です。 1867年に最初のモダンローズ「ラ・フランス」が作出される以前の種類をオールドローズといいます。オールドローズは見た目の美しさだけでなく香りも良いため、香水やバラ水として活用されてきました。ガリカ、ダマスク、アルバ、センティフォーリア等の系統で多様な品種がありますが、ほとんどが春の一季咲きで優雅な花形と香りを秘めています。





分類
非つる性系・・・アルバ系(Alba)、ブルボン系(Bourbon)1817年~ 、ボールソルナ系(Boursolt)、チャイナ系(China)、ダマスク系(Damask)、ガリカ系(Gallica)1500年以前、モス系(Mos)、ポートランド系(Portland)1700年代より、ケンティフォーリア系(プロバンス系)(Centiforia)1596年~ 、スィート ブライアー系(Sweet Briare)、ハイブリット パーペチュアル(HP)1840年~ 、ロサ・フェティダ・ペルシアナ(HP)1837年~ 、ティー・ローズ系(Tea)1838年~ 、ハイブリット・フェティダ系1900年~ 、ハイブリッド・ムスク系1920年~

つる性系・・・エアシャー系(Ayashire) 、クライミング ボールソルト系(Cl.Boursolt)、クライミング ティー系(Cl.Tea)、ノアゼット系(Noisette)1812年~ 、センパーヴィレンス(Sempervirence)

モダンローズ


ラ・フランス (出典:WEBバラ図鑑)

1867年に、ギヨーが作出した「ラ・フランス」がモダンローズの第一号といわれ、それ以前のバラ(オールドローズ)と区別してモダンローズと称するようになりました。オールドローズが一季咲きだったのに対して、"完全四季咲き" "高芯剣弁咲き(花びらが剣のように尖り、中央の芯が高くそびえる姿)"を特徴とするハイブリッド・ティー(ハイブリッド・パーペチュアルとティーローズの交配)。それまでにない花色が出現し多彩ですが、香りはオールドローズほどの濃厚さはありません。
1805年頃、ナポレオン皇帝妃ジョセフィーヌの専属園芸家アンドレ・デュポンが世界で初めてバラの人工交配に成功しました。それまでは昆虫による自然交配でしたので、バラの歴史にとっては画期的な出来事でした。当時のヨーロッパでは、バラは一年に一度しか咲かないのが原則でしたが、中国原産の庚申薔薇が持ち込まれて"四季咲き"が実現しました。それから約半世紀後の1867年、フランスのギヨーによって「ラ・フランス」が作出されてモダンローズの原型となりました。

分類
非つる性系・・・一季咲き系・・・シュラブ グランド カバー系(SGC)
          四季咲き系・・・イングリッシュ ローズ系(Eng)、ミニチュア系(Mini)、シュラブ グランド カバー系(SGC)
                    ブッシュ性系・・・ハイブリット ティー系(大輪咲き)(HT)、フロリバンダ系(中輪房咲き)(HT)、
                    パティオ系(小中輪房咲き)(Patio)、ポリアンサ系(小輪房咲き)(Pol)

つる性系・・・・・一季咲き系・・・ランブラー クライマー(R)、クライング ミニ(Cl.Min)、イングリッシュ ローズ(Eng)
          四季咲き系・・・ランブラー クライマー(R)、クライング ミニ(Cl.Min)