コラム COLUMN

第6回 キキョウ 万葉呼名:あさがほ

萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなえし また藤袴 朝顔(あさがほ)の花

山上憶良

山上憶良(やまのうえのおくら)は何を思って「秋の七草」を数え上げたのでしょう。『万葉集』巻八にはこのように掲載されています。
1537 -秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 7種(ななくさ)の花-
1538 -萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなえし また藤袴 朝顔の花-
漢語や仏典には「七」を特別な数としてとらえていましたから、憶良が「七」にこだわり、指を折り数えている様はとても愉快です。そして、憶良の「あさがほ」が、夏の早朝に開花するアサガオではなく、今日でいう「ききょう」だという説は納得できますネ。 こうして「秋の七草」は現在まで脈々と伝えられてきたのです。

ここで、憶良の晩年の歌を一首ご紹介します。
-憶良らは 今は罷(まか)らむ 子泣くらむ そのかの母も 吾(あ)を待つらむそ-
このとき、70過ぎの憶良に幼子がいるはずもなく、子が泣いているから失礼すると、宴席を退出するときに詠んでいます。憶良の歌は生活感があって実にユーモラスで、1300年後に生きているわたくしたちにも身近で解りやすい作品が多く、お隣さんのような親しみが湧いてきますネ。

花びらは一重のほかに八重もあり、古くから食用、薬用としても利用されてきました。花言葉は「清楚、気品」(ピッタリ!!)。英語では、バルーン・フラワー、直訳すると「風船花」。これは、愛らしい蕾の形から命名されたのだと思います。著名な俳人・加賀千代女(かがのちよじょ)はこの蕾に心惹かれたようでこう詠んでいます。
    -桔梗の花 咲くときぽんと 言いそうな-
今にもはじけそうな音が聞こえてくるようです。(ま)

追記:白いキキョウを見つけました(2016年7月5日)。そしてポンとはじけそうな蕾も。